藤井聡太七段が強い理由は何?

藤井聡太七段が強い理由は何?

藤井聡太七段がデビューしてから1年以上経過し、朝日杯将棋オープン戦でも優勝した藤井聡太さんが強い理由が少しづつ明らかになってきました。ということで、藤井聡太さんが強い理由について、解説していきます。

藤井聡太七段は、どのくらい強いの

デビュー戦から30連勝した藤井七段は、結局どのくらいの強さだったのでしょうか?

結論としては、やはり化け物クラスの強さでした。全棋士が参加する朝日杯将棋オープン戦で優勝し、2017年度の成績では、対局数、勝ち数、勝率、連勝の四部門で全棋士中一位になりました。デビュー戦から30連勝も、もちろんマグレではなく当然の結果といえるでしょう。将来、どのくらい強くなるのか見当もつきませんよね(笑)。

さらに、棋士の強さを示す指標の一つであるレーティングも、全棋士中8位でした。一般に、藤井七段のように、デビューしたばかりの棋士は、レーティングの低い低段者と多く対戦するため、レーティングが上がりにくい仕組みになっています。そのなかで、藤井七段は、わずか1年余りで、トップ10入りしており、驚異的といえます。もう既に一番強いのでは?

(リンク元:棋士別成績一覧(レーティング))

将棋の順位戦は、5クラス(A B1 B2 C1 C2)に分かれており、藤井七段は、下から二番のC級1組に在籍していますが、もう最上位クラスであるA級に飛び級させた方が、良いのではないでしょうか(笑)。

また、先日、史上最年少で七段に昇段しました。竜王戦5組準決勝で勝利し、竜王戦4組に昇級し、規定により昇段し、六段から七段になりました。プロ棋士の七段と言えば高段者で、年配の方のイメージがあるのですが、藤井七段はまだ15歳、恐るべき昇段スピードです。師匠の杉本七段と同段になってしまいました。

パターン認識能力

結局のところ、藤井聡太七段の強さの秘密は何なのでしょうか?

羽生2冠が藤井七段に対して指摘した、強さの秘密が、パターン認識能力でした。

羽生2冠「先を読む力はもちろんだが、(盤面の)形の認識度の高さを指していて感じる。この形はいい、悪いというパターン認識能力が非常に高い」
 引用元:突出したパターン認識力=藤井六段の強さ、羽生2冠が分析

一般に、将棋のプロ棋士がアマチュアよりはるかに強いのは、パターン認識が高いことに起因していると考えられます。例えば、この型・陣形は、有利・不利などのパターンをプロ棋士の頭の中に大量に記憶されています。

一見、アマチュアより強いプロ棋士は、頭の回転が常人よりはるかに速く、多くの局面を読んでいるように思われます。実際には、プロ棋士も、頭の回転速度はそれほど一般人と変わらず、代わりに、多くの局面パターンを記憶しているため、読む量を省略することができ、結果的にプロ棋士は常人離れした読みの深さを発揮します。

藤井七段は、このプロ棋士のなかでも、パターン認識能力が突出していると言えるでしょう。例えば、高度な次の一手の問題を、全プロ棋士に解かせたら、藤井七段が断トツかもしれません。

結局、強くなるには、日ごろから思考のパターン化が必要ですね。言うのは簡単ですが…(笑)。

将棋ソフトを併用

藤井七段は将棋ソフトを併用して、将棋の勉強をしていることは、よく知られています。
羽生さんは、将棋ソフトで勉強する利点を次のように述べていました。

「これまで、どこがよかった、悪かったというのは、人に教わったり自分なりに深く考えなくてはいけなかった。ソフトがこれだけ強くなると、100%ではないけれどある程度良し悪しを判断してくれます」

引用元:「明らかな弱点がないのが大きな特長」――羽生善治三冠が、記録的な連勝を続ける最年少棋士・藤井聡太四段を分析。強さの秘密は?

既にプロ棋士より強い将棋ソフトは、ある局面に対して、適切な一手を教えてくれます。

藤井七段もソフトを用いることで様々な局面で最適な手を知ることができ、どんな局面でも対応できる力を養ったと考えられます。さらに、藤井七段はパターン認識力も優れているため、通常のプロ棋士よりはるかに多くの局面を適切に判断できるのかもしれません。

藤井七段は、終盤に加え、序盤も強いことは有名ですが、この序盤の強さも、多くの局面を適切に判断できる点からくるのかもしれません。

自分の頭で考える

師匠・杉本七段は、藤井七段の強さについて、以下のように述べていました。

「将棋を効率的に上達させるには、定跡研究という方法がある。定跡研究とは自宅で定跡書を開いて、棋譜を並べながら研究する勉強方法だ。要するに他人の指した好手をまねるということである。だが藤井氏は、最新の定跡研究にはあまり熱心ではなかった。それよりも最初から、自分の頭で考えることを徹底していた。」

引用元:藤井聡太の強さを支える「二つの顔」、師匠・杉本七段が明かす

藤井七段は、定跡の勉強はあまりやらず、自分の頭で考えることを徹底していました。逆に自分で定跡を考えることで、本に書いてある定跡も頭に入りやすく、特に無理に記憶することなく定跡を吸収したのかもしれません。上達するためには、やはり自分の頭で考えることが重要といえます。

それにしても、藤井さんの師匠である杉本七段も結構、いい発言をしていますよね。しっかりと藤井ブームに乗り、藤井さん関連の本も出していました。ちょっとためになりそうで買いたくなります(笑)。

あえてリスクをとる

藤井七段の場合、安全な手と危険な手の2通り選択できる局面では、危険な手、つまりハイリスクハイリターンな手を選ぶそうです。

藤井七段の師匠・杉本七段も以下のように述べています

杉本七段「藤井に関しては、間違いなく踏み込むほうを選びます。「なぜここで、あえてこんなに危ない手を指すのか」と驚くくらい踏み込んでいく」
引用元:藤井聡太の強さを支える「二つの顔」、師匠・杉本七段が明かす

リスクのある手を選ぶと、落とし穴がいたるところにあるため、一手一手を慎重に読む必要があります。藤井七段は自ら危険な手を選ぶことで、自分を追い込んで鍛えているようです。確かに、自分を常に追い込んだ方が、短期的には負けても、成長しやすく長期的に見てプラスに働くのかもしれません。

師匠が言うように、藤井七段が危険な手を選ぶことで、読みを強いられるため、対局密度が他の棋士よりはるかに濃いともいえます。

杉本七段「将棋を覚えて十年です。将棋に費やしてきた時間は、大人に比べると決して長くはありませんが、圧倒的に密度が濃い。学びは時間ではなく、密度ということです」

また、師匠・杉本七段は、藤井七段の将棋を、自分の限界に挑戦する将棋と述べていました。藤井七段は、自分の限界に挑戦して、絶えず成長しているのかもしれません。

杉本七段「「危なそうだ」とひるんだり、「負けたらどうしよう」と恐れたり、「とりあえず安全策を取ろう」と消極的にならず、最短で勝ちにいく。邪念を交えずに自分の限界に挑戦する将棋です。」