オランダの天文学者マーゴット・ブラウワー氏等の研究グループが、宇宙の重力分布を解析して、ダークマターを考慮していないエントロピック重力理論と一致したと発表しました。つまり、宇宙に多く存在するとされてきたダークマターが、実は存在しないと解釈できることから衝撃的ですよね。

そもそもダークマターとは

ダークマター(暗黒物質)とは、全宇宙の質量の約27%を占める物質とされていますが、現在まで直接観測はされておらず、謎の物質とされています。このダークマターは、透過性が非常に強いため、観測器にまったく検出されず、物理学者が必死になって探している物質と言えます。もちらんダークマターが発見されれば、ノーベル賞級の発見です。

しかし、ダークマター(暗黒物質)は、現在まで直接観測されてはいませんが、間接的には観測されています。特に有名なのは以下の2つです。

銀河の回転速度問題

渦巻銀河の外縁部は、非常に高速で回転しており、目に見える銀河の物質だけでは説明できないとされています。一方、銀河内部にダークマターが多く存在すると仮定すると、銀河の外縁部の高速回転もうまく説明できるとされています。

重力レンズ効果

アインシュタインの一般相対性理論によると、強い重力により、空間が歪み光の通り道も曲がるとされています。レンズによって光が曲げられる現象と似ていることから重力レンズ効果といわれています。宇宙に存在する膨大な数の銀河も重力レンズ効果により光を捻じ曲げているとされています。しかし、目に見える物質だけでは、光が曲げられる重力レンズ効果を説明できないケースが多くあり、こちらも、ダークマターが存在すると仮定することで、重力レンズ効果の観測データを説明できるとされています。

しかし、今回発表された研究結果では、ダークマターを考慮しなくても、エントロピック重力理論を取り入れることで、重力レンズ効果の観測データをうまくできると発表しています。表現を変えると、これまで多く研究されてきたダークマターが、実は存在しなかったと言えます

ちなみに、エントロピック重力の創始者であるヴァーリンデ教授本人も、「銀河の回転速度問題」をエントロピック重力理論で説明できる論文も発表しています。

エントロピック重力理論は、ダークマターの理論よりシンプル

今回研究結果での銀河の重力分布は、ダークマターを考慮しても説明できます。一方、この銀河の重力分布は、ダークマターを考慮しないエントロピック重力理論でも説明できることになります。どちらが正しいのかは、今後の研究結果をまつしかありません。

ただ、ダークマターという自由変数を考慮してていないエントロピック重力理論の方がシンプルな理論となっています。これまで、成功を収めた理論は、その数式がたいていシンプルである傾向があります。そのシンプル性から、エントロピック重力理論の方がやや有利と言えます

例えば、量子力学の創始者のひとりであるディラックが見つけたディラック方程式は、ローレンツ共変性を持つ、非常に美しい方程式とされています(ちなみに凡人の私には、ディラック方程式は少しごっつい感じがしてしまいます(笑)。)。

エントロピック重力理論では、「重力」は見かけ上の力?

さらにエントロピック重力理論によると、なんと「重力」は見かけ上の力と説明されています。元々、自然界には4つの力(重力、電磁気力、強い力、弱い力)があることがよく知られています。しかし、エントロピック重力理論では、自然界には、3つの力しか存在せず、重力は「見かけ上の力」となっています。

見かけ上の力で有名なのは、遠心力です。遠心力とは、よく車に乗ってカーブを通ると、体が外側に引っ張られる力のことです。地球上に住む人間は、地球の重力を常に受けて生活していますが、なんと我々になじみ深い「重力」が、見かけ上の力にすぎず、本当の力ではないのは衝撃的ですね。

エントロピック重力理論は、ホログラフィック原理に大きく関係している

エントロピック重力理論は、元々ホログラフィック原理による重力と熱力学を結びつけており、ホログラフィック原理に大きく関係しているといえます。

ちなみに、ホログラフィック原理とは、「ホログラフィック原理 (holographic principle) は、空間の体積の記述はある領域の境界、特にみかけの地平面(英語版)のような光的境界の上に符号化されていると見なすことができるという量子重力および弦理論の性質である。」(引用元…ホログラフィック原理 Wikipedia

わかりやすく解説すると、現在の宇宙は、よく知られるように3次元(縦、横、高さ)ですが、ホログラフィック原理では、現在の宇宙は、実は次元であり、3次元に見えるのは、ホログラムの立体映像のようなものに過ぎないとされています(重力は幻なのか? ホログラフィック理論が語る宇宙)。つまり、ホログラフィック原理では、この世界は実は2次元ということになり、こちらも衝撃的ですね。

このホログラフィック原理は、比較的最近出てきた理論ですが、ブラックホールの蒸発を説明したりと、かなり有力な理論とされています。

エントロピック重力理論の真偽は、今後の実験結果を待つしかない

ダークマターも重力も存在しないとする、衝撃的なエントロピック重力理論に物理会はざわついているそうです。例えば、生涯ダークマターを研究してきた研究者にとって、実はダークマターは存在しなかったとなれば、動揺するのも無理ないですよね。

いずれにせよ、エントロピック重力理論の真偽は、今後の実験結果を待つしかありません。ダークマターの膨大な研究、実験データがあるため、エントロピック重力理論の真偽は結構早く判明するかもしれません。

もし、エントロピック重力理論が正しいとなれば、重力が見かけ上の力となり、コペルニクス的転回で宇宙観も大きく変わり実に衝撃的ですよね。今後も革新的が研究がどんどん出てきそうで楽しみです。