量子テレポーテーションで近い未来に「どこでもドア」は実現可能か?
近年、著しく量子テレポーテーションの技術や移動距離が向上しており、2015年9月アメリカ国立標準技術研究所(NIST)の研究チームが、光ファイバーを用いて100Km先への量子テレポーテーションに成功しました。
この量子テレポーテーションを用いて、近い未来、ドラえもんの道具として有名な「どこでもドア」のように、人間が瞬間的に、遠い場所に移動できるようになるのでしょうか?例えば、1秒もかからずに量子テレポーテーションで東京~大阪間を移動することが可能になるのでしょうか?
理論上は人間の量子テレポーテーションは可能ですが、現在のところ、技術的に困難な点があるため、数十年先のスパンでは、人間を量子テレポーテーションさせるのは、やや困難かもしれません。
量子テレポーテーションとは
そもそも量子テレポーテーションとは、どのような概念なのでしょうか?
量子テレポーテーションとは、「量子もつれ」の効果を利用して遠く離れた場所に量子状態を転送することです。(wikipediaより)
ここで「量子もつれ」とは非常に難しい概念ですが、2つの粒子が「量子もつれ」の状態にある場合、その粒子間の距離がたとえ数光年離れていても、一方の粒子からもう一方に粒子に情報を伝達することが可能です。
この「量子もつれ」を利用して量子テレポーテーションを行うと、粒子の量子状態を一瞬で移動することができます。
具体的には下図で説明しますと、東京に粒子Aと粒子Bがあり、大阪に粒子Cがあるとします。
量子テレポーテーションを実行すると、一瞬で大阪にいる粒子Bの量子状態が、東京にいる粒子Aの量子状態(上図赤色)と同じになります。つまり、一瞬で東京にいる粒子Aが、大阪にいる粒子Cに見かけ上移動したことになります。
ポイントとしては
・量子テレポーテーションは粒子の移動ではなく、量子状態の移動である。
・量子テレポーテーションの際、もとの粒子(上図の粒子A)の量子状態は破壊される。
量子テレポーテーションを人間に適用した場合
人間(例えばAさん)を量子テレポーテーションで東京から大阪に瞬間的に移動させようとした場合、以下の作業が必要になります。
1.量子もつれ状態の生成
東京で、量子もつれ状態にある人間(Aさん)を構成する元素と同じ元素(材料C)を用意して、材料Cと材料Bとで量子もつれ状態を作り出します。
この材料Cは、人間(Aさん)を構成する元素と同じ元素からなる、アボガドロ数以上の元素の集合体です。つまり、人間(Aさん)を構成する元素と同じ元素を用意する必要があり、とほうもない話ですね。
2.材料Cを東京から大阪に移動
次に、材料Bと量子もつれの状態にある材料Cを東京から大阪に移動します。また、上記の「1.量子もつれ状態の生成」と「2.材料Cを東京から大阪に移動」は、量子テレポーテーションを実行する前に準備する必要があります。
この量子もつれ状態は、外部から光や宇宙線を当てただけで破壊されてしまうため、材料Cを非常に慎重に扱って大阪に移動しなければなりません。
東京
人間(Aさん)、材料B
大阪
材料C
3.量子テレポーテーションを実行
次に東京にいる、人間(Aさん)と材料Cとの間に新たな量子もつれを作り出した瞬間、人間(Aさん)の量子状態が破壊され(つまりAさんは、なんと死んでしまいます…)、一方、大阪にある材料Cが、人間(Aさん)と同じ量子状態になります。
4.材料Cから人間を組み立てる
最後に大阪にある材料Cから人間(Aさん)を組み立てれば、完了です。つまり、東京にいたAさんは、一瞬で量子テレポーテーションで、大阪に移動したことになります。
大阪
材料C → 人間Aさん
材料Cから人間を組み立てること自体、現在の技術では、もちろん不可能な作業です。
また、大阪で材料Cから人間(Aさん)を組み立てるためには、人間(Aさん)を構成する各元素の位置関係等の情報リストも、東京から入手する必要あります。
量子テレポーテーションの詳しい内容は、以下の動画で、有名な理論物理学者ブライアン・
量子テレポーテーション前後の意識は同一?
仮に上記の面倒な過程を経て、Aさんか東京から大阪に移動できたとします。この場合、本当にAさんの意識が東京から大阪に移動したのでしょうか?という問題が残ります。
実はAさんの意識はすでに消滅していて、大阪にいるAさんは、東京にいたAさんの単なる複製かもしれません。とにかく、量子テレポーテーションを実行すること自体、非常に勇気がいる行為ですね(笑)。
機械化された人間なら、量子テレポーテーションなら比較的容易
機械化された人間の場合、上記の東京から大阪に量子テレポーテーションで移動することは、比較的容易です。
機械化された人間の記憶のもととなるハードディスクが、量子テレポーテーションの対象の場合、ハードディスク自体構成がシンプルなため、量子テレポーテーション事態は、比較的容易かもしれません。
最も、生身の人間を本当に機械化できるのかの疑問の余地はあります。
まとめ
生身の人間を量子テレポーテーションすることは、現在のところ技術的に困難な点があり、技術的特異点等の科学の急激な進歩を期待したとしても、今世紀後半か来世紀以降になるのではないでしょうか?新しい想像もつかないアイディアがあれば、別だとは思いますが…
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